プラークコントロール

月並な表現だが、歯科医療は曲り角に来ています。世のなかには解決困難な問題がいっぱいあり、歯科医療も例外ではないといいたいところだが、実は例外なのである。歯科医療の問題点、つまり歯の病気は、ほんとうは消えてなくなろうとしている。最大の福音はワクチンだ。あと数年すれば、むし歯のワクチンができあがり、むし歯はなくなる。歯周病菌に対してもワクチンが開発されるだろうか ら、あまり遠くない将来に、歯周病もなくなるとも言われている。そして、むし歯や歯周病のワクチンを生みだした学者は、ノーベル賞をもらえるのではないか。 英米で開発したむし歯ワクチンは、歯に塗布すればよいとのことである。それならもうひと工夫して、 フッ素同様ハミガキに混ぜられるはずだ。すると、もう歯医者へ行かなくてもよい。歯周病ワクチン も製造され、ハミガキに入れられるだろうから、歯医者どころか、歯垢を取る歯科衛生士も出番を失う。 日本じゅうの約6万軒の歯科診療所にぺんぺん草が生え、歯科大学はゴーストタウンと化す可能性があるのではないか。フッ素の問題もふっとんでしまう。患者は大助かりである。死ぬまで歯を一本も失わなくてすむ。もしかしたら、そのような理想が待っているかもしれない。

20世紀後半になって、歯科医療は治療から予防へと大きく変わった。まず50年代に水道水フッ素 化が本格的に始まり、むし歯を減らし予防できることが判明し、すでに世界の50数か国で実施され、 いまもなお広まりつつある。次に70年代に北欧やアメリカで歯の再石灰化を軸にカリオロジーの理論 が打ち立てられ、初期のむし歯を削らず詰めずに治せることがわかった。フッ素とカリオロジの併用 により、人類のむし歯は劇的に減りつつある。歯周病にしても、80年代に入って、歯周病感染菌の病 巣であるプラーク(歯垢)を歯ぐきと歯のあいだからひっかきだすことで抑えることができるようにな った。いわゆるプラクコントロールによって、歯を歯周病から守れるようになった。 以上3つの成果が得られて、歯の病気は治すものでなく、防ぐものであることが世界の常識になった。 また、歯科医療が治療から予防へ方向転換することで、フッ素化と再石灰化理論とプラクコントロー ルが普及し、威力を発揮できる。